こんにちは!クルマ好きおじさんのマーケター中年Kです。
2024年の年末にイギリス・ジャガーの新世代ブランド戦略の一環として、ブランド・ロゴとTYPE 00というコンセプトカーが相次いで発表されました。
今回は、クルマ好きマーケターそしてジャガーオーナーとして、新世代のジャガー・ブランド戦略について独断と偏見で斬ってみたいと思います。
マーケティング系の読み物として気軽にお読みください。
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変化には批判がつきものなのだ。
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ブランド戦略を分かりやすく解説します。
1.新世代のジャガー・ブランド戦略
ジャガーは、かねてより2025年から高級EV専用ブランドとして再スタートすることを表明していました。
近年のジャガーの経営状態、環境問題などの世界情勢などを鑑みると、この戦略については時代の流れで仕方がないのかな?と思います。
ジャガーのEVシフトについては、過去の記事で話題にしています。
日本市場においてもベンツ・BMW・アウディといったドイツ御三家に押されており、ジャガー・ブランドの存在感が年々薄くなっているように感じていました。
ジャガーの過去の栄光を知る世代の人間としては、何とも寂しい状況ですね。
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時代の流れを読むのは難しいのだ。
ついに登場!新世代デザイン
2025年の再スタートを控えた2024年の年末になると新世代のブランド戦略の具体的な中身が明らかになってきました。
まず、2024年11月19日に新たなブランド・ロゴへの刷新が発表されました。
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ピンクのイメージカラーと相まってかなりイメージが変わっています。従来のブランド・イメージとの関連性はほとんどなく、新世代への意気込みが感じられます。
続いて、12月3日にはアメリカの「デザイン・マイアミ・バーゼル2024」にて新世代のコンセプトカーが発表されました。
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デザインについて
「TYPE00」と名付けられたコンセプトカーが公開されると、クルマ好き界隈がざわつき始めました。
今回のジャガーの新世代ブランド戦略とその施策については、賛否両論というか圧倒的に「否」の意見が多いように見受けられます。
オールドファンのノスタルジックな視点で見た「ジャガーらしさがない」という反発だけでなく、単純に「カッコ悪い」という火の玉ストレートな意見まで、さまざまな反響があるようです。
デザインは好みの問題という前提による個人的な見解は、デザイナーやブランドマネジャーが「新しい」「独創的」という違いを出すことに囚われすぎて肩に力が入りすぎたのかな?と思います・・・。
とはいえ、TYPE00はコンセプトカーなので、さすがにこのままのデザインで市販化されることはないと思います。
実際、クーペではなく4ドアで開発されているらしいので、洗練されたデザインで発売されることを期待して待ちましょう!
ジャガーは歴史あるブランドなので、大きな変化に対する抵抗は想定内だったのかも知れません。
少なくともジャガーというブランドへの注目度を高めることだけは成功したのではないでしょうか?
個人的には、こちらの記事がとても感銘を受けました。
![忠犬P](https://6rin.net/wp-content/uploads/2023/04/pani.jpg)
なんだか変な形なのだ
2.ブランド戦略とは?
そもそもブランドとはいったい何なのでしょうか?ざっくりと分かりやすく解説してみます。
ブランドってなんなの?
まず「ブランド(Brand)」をWikipedia先生に聞いてみましょう。
ブランドは元々、牧場の所有者が自分の家畜などに焼印を施し、他者の家畜と区別するために行われた行為を表す北欧の言葉に由来していると言われている。
Wikipediaより引用
元々は、モノを識別するための記号に過ぎませんでしたが、それが転じて自社商品を他社とを識別するためのビジュアルやロゴなどを包括したイメージを意味するようになったようです。
ブランドには、自社商品を競合商品との差別化をはかることにより、自社の優位性を訴求してユーザーに選んでもらうという役割があります。
企業・商品の活動の積み重ねにより、ユーザーの信頼を勝ち取り「ブランド価値」として認知されていくのです。
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見えないものだから分かりにくいのだ
ブランド価値について
続いて、ブランド価値とは何か?について、分かりやすくお話しします。
中年Kのマーケターとしての経験をもとに、ブランド価値の構造について簡単に図式化してみました。
![ブランド価値の構造](https://6rin.net/wp-content/uploads/2025/01/brand_value.jpg)
ブランドを提供する企業は、ユーザーに自社ブランドを選んでもらい、満足する体験が得られることを目指して日々活動をしています。
よりよい商品の提供のために研究・開発を行い、イメージを高めるべくプロモーションを展開し、アンテナショップやイベントを通して体験できる場を提供しています。
ブランド価値にとっては、過去に積み上げてきたヘリテージ(遺産)を活かしたブランドのストーリーが重要になってきます。
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ブランド価値は一日にしてならず、ですね。
ブランドを選ぶ意味
ブランドのストーリーの例として「タオル」についてお話ししてみます。
タオルには、「中国製」のリーズナブルな商品とやや高価でも手触りの良い「今治タオル」が売られています。
あるユーザーが多くのタオルの中から今治タオルを買うという行為は、今治タオルの産地の歴史・製法のこだわり・ブランド再興といった背景にあるストーリーに共感したことを意味しています。
クルマの世界でも同じことがいえます。
日本で国産車ではなく、あえて高額な外車を乗るということは、ブランドとその背景にあるストーリーも一緒に買うということになります。
自己満足に過ぎないかもしれませんが、それは高い金額の対価としてユーザーだけが味わえる特権でもあります。
ブランドを選ぶということは、メーカーとユーザーとのWin-Winの関係が構築できている状態といえます。
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特にクルマは高価な商品なので、ブランドが築き上げてきたストーリーがイメージの醸成には大切になってきます。
ブランドが紡いできたヘリテージをどう扱って商品デザインや広告イメージとして表現していくのか?
世界中のメーカーの商品開発者やマーケター、ブランドマネジャーといった人々はユーザーとのWin-Winの関係構築のために日々奮闘しているのです。
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ブランド価値を高めるためにマーケター奮闘しています!
3.ジャガーのブランド価値
最後にジャガーのブランドの価値とはいったい何か?について考えていきます。
ジャガーのヘリテージ
みなさんは「ジャガー」と聞いてどんなイメージを持ちますか?
その人の年代やクルマの嗜好によって、さまざまなイメージを思い浮かべると思います。
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年配のクルマ好きの人なら、「E-Type」や「XJ」などに代表される低く構えたエレガントなデザインを思い浮かべるかも知れません。
さらに、ジャガーを所有したことがある人ならば、絶妙な乗り心地と滑らかなハンドリングを両立し猫足と評されたサスペンションを思い出すことでしょう。
モータースポーツのファンなら、ル・マンでの優勝をはじめとしたレースでの輝かしい実績も忘れられません。
そして、リーピングキャットとして親しまれた猫(ジャガー)のロゴ・マークやオーナメントは多くの人に親しまれていました。
これらのブランド・イメージは、近代ジャガーの歴史として1960年代くらいからの長年の積み重ねの結果であり、まさにブランドのヘリテージといえるものです。
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積み上げたイメージが大事なのだ
ジャガーにはさまざまな紆余曲折がありました。その歴史を少しだけ振り返ってみます。
輝かしい歴史を誇ったジャガーですが、1990年代には経営不振によりアメリカ・フォード社の支援を受けて傘下に入ります。
当時のジャガーは、同じく業績不振からフォード傘下となっていたアストンマーチンとのポジションの棲み分けとともにベンツ・BMWといったドイツ勢への対抗策も練る必要がありました。
実際にアストンマーチンは、開発予算が限られた中でジャガーXJ-SをベースにNEWモデルを開発し、1994年に「DB7」として発売されています。
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このような背景もあり、ジャガーは高級な少量生産メーカーから、ある程度の大衆化を目指した戦略へと舵を切ることになります。
2000年代に入るとフォード・グループのプラットフォームを流用しながらラインナップを拡充していきました。
リンカーンLSをベースにした「S-TYPE」、モンデオをベースにした「X-TYPE」といった売れ筋サイズのセダンを連発し、マーケット・シェアの拡大を目指しました。
![](https://6rin.net/wp-content/uploads/2025/02/s-type.jpg)
これらのデザインは、フラッグシップ・セダンの「XJ」のイメージを踏襲していましたが、過去のデザイン・モチーフに頼りすぎた安直な展開にも思えたものです。
結果として販売台数は伸び悩み、大衆化戦略は成功とは呼べないものでした。一方で、車種が増えたことによりブランド・イメージが陳腐化してしまったといえるでしょう。
当時のフォードのブランド戦略では、ジャガーのブランド価値を高めることはできませんでした。
一方のアストンマーチンはフェラーリに対抗できるようなプレミアム・スポーツブランドとして大復活を果たしています。皮肉なことにアストンマーチンのブランド戦略は成功したといえます。
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ジャガーは中途半端なブランドになっていたようです
過去の呪縛と苦悩
その後、フォードの経営不振を経て、ジャガーは2008年にインド・TATAの傘下に入りました。
近年は、古いイメージからの脱却と新しいブランド価値の構築というミッションの達成に苦しんでいたように見えました。
そんな中、世界的なSUVブームに乗ってジャガーもSUVの開発に乗り出します。
2016年にジャガー初のSUV「F-PACE」を発売。続く2018年には、よりリーズナブルな「E-PACE」を発売しシェアの拡大を目指しました。
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さらに、SUVの開発と並行して世界情勢や環境問題への対応として次世代を見据えたEVの開発も進めていました。
2025年のEVシフトへの布石ともいえるフルEV「i-PACE」を2018年に発売しています。
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SUVブームでポルシェもアストンもマセラティもこぞってSUVをラインナップに加えていますが、ブランドイメージを損なわずに上手くデザインしていると思います。
ライバルに比べるとジャガーのデザインはカジュアルすぎる印象があります。結果として、ジャガーのブランド・アイデンティティが希薄になったことは否めません。
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ジャガーらしさがなくなったのだ
新たなスタートと賭け
フォード時代から30年近く続いたの大衆化路線などの混迷を経て、ドイツ勢に比べるとジャガーは特徴のないブランドとなってしまい、プレミアム・ブランドとしての地位も危うくなりました。
そのため最後の手段として、長きに渡ったベンツ・BMWとの戦いを捨て、より高額で少量な超プレミアム市場での勝負に舵を切ったのではないか?思われます。
想定ライバルとしては、アストンマーチン、フェラーリあたりのプレミアム・スポーツか、さらに上のポジションにあるロールス・ロイスの領域を目指しているのかも知れません。
この戦略の真意は外野からは知るよしもありませんが、オーナーの端くれとしてジャガーにはこれからも頑張って欲しいと願っています。
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ジャガーには頑張ってほしいのだ
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個人的には複雑な気持ちです・・・
![六輪車生活|オープンカーとミニベロのある生活](https://6rin.net/wp-content/uploads/2023/04/title_logo-3.png)